本研究は、単結晶試料を様々な気体環境で繰返し変形させ、繰返しすべりの不可逆性に起因する試料表面粗さの増加挙動を、STM(走査型トンネル電子顕微鏡)を用い詳細かつ定量的に観察することにより、繰返し塑性変形の不可逆性ならびに疲労き裂発生に及ぼす環境の効果を明らかすることを目的とする。 平成6年度は、主として環境を制御した疲労試験を行なうための試験装置の作製ならびに走査トンネル顕微鏡(STM)による試料表面粗さ定量測定のための予備試験を行なった。すなわち現有の電気油圧式サーボ疲労試験機に、試作した真空チャンバーならびに排気系を取付け、ひずみゲージを装着したダミ-試験片を用て約5x10^<-7>torrの真空下でひずみ制御疲労試験を行なうための予備試験を行った。また種々の気体環境下で疲労試験を行なうために必要な試験治具を設計するとともに測定系を整備した。またTi合金の疲労破面についてSTM観察を行ない、試料表面への蒸着の条件、試料表面粗さの定量測定条件等について検討を行なった。 平成6年度の研究により、環境を制御した条件で疲労試験を行うための準備はほぼ整った。実験試料とする金属単結晶としては銅、アルミニウム、銀を使用する計画であるが、それぞれの金属ですべりの不可逆性に影響を及ぼすと考えられる気体の種類が異なっており、研究目的を達成するために最も最適な試料と試験環境の組み合わせを選択する必要がある。現在この点について検討を行っている。
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