研究概要 |
延性材料のクリープ余寿命予測が工業的に問題になるのは、巨大老朽化学プラントや老朽発電設備等である。本研究では、老朽発電設備に 過熱器用鋼管として多用されている2.25Cr-1Moの鋼管を対象にして研究を進めた。従来、クリープ機構の解明を目的とする研究の場合は定応力負荷方式が普通であるが、本研究では敢えて定荷重負荷方式にした。理由は、長時間クリープ試験に関するデータは全て定荷重方式で蓄積されており、これ等の結果と比較照合するためである。 クリープ歪と時間との関係は、平成6年度購入したAD変換器でディジタル化し、データロガーに蓄積できるようになったので、極めて能率良く研究成果は初期の予定よりも遙かに進んだ。得られた主要な成果は、(1)調べた全てのクリープ条件の下で、歪速度の対数と真歪との間には線型の関係が成立することが確認され、結果は「Scripta Met. et Mater. (1995)」に投稿した。(2)前項で得られた関係は、実機で11年間使用した径年劣化材についても成立することが確認され、「鉄と鋼」に投稿した。(3)第1項で示した経験則は、クリープ予寿命推定技術に活用すると、極めて有力なツールになる。そこで、線型関係を規定する二つパラメーター、すなわち仮想的初期歪速度と歪速度加速因子の物理的意味を簡単な思考実験と転位モデルで考察した。その結果、仮想的初期歪速度は定応力クリープ試験における定常クリープ速度と一致することが示された。また、歪加速因子は未使用材においては応力の自乗に逆比例し、長時間使用材については応力に反比例するが、これらはクリープ変形中の加工硬化前者については放物線則に従っていること、後者については線型則に従っていることを示唆している。この結果も「鉄と鋼」にした。(4)は新しく導入した仮想的初期歪速度と歪速度加速因子を用いたクリープ余寿命推定方については、CISE(Milan-Italy,1995 Oct.)において発表した。
|