前年度に低温下においてクリープ試験を行えるように整備した装置を使用して有機複合材料(エポキシ系ガラス繊維強化樹脂)及びその母材(エポキシ樹脂)の照射下クリープ実験を行いデータの集積を行うことを計画し母材については80%のデータを得た。 低温下における放射線照射によって有機材料にどのような化学反応が起こっているのかを評価するために照射試料について電子スピン共鳴(ESR)の測定を開始する為に、測定法の検討を行った。試料の大きさは、2×2×21mmで十分であること、ESR測定条件としては、極低温下の評価をするために液体窒素温度で、石英管に真空封入(10-6torr.)して行うことにした。基礎的データとして、石英管のみの照射を行いESRの観測を行ったが母材のものに比べて無視できることが分かった。 母材のESRに関して観測を行い放射線照射にともなう変化、また、温度上昇にともなう変化の評価を行った。その結果、ESR信号は照射線量の増加に従ってその積分量(ラジカルの数)が増加すること、また、温度上昇に対しては、220Kまではラジカルの減少は少ないがこの温度を超えると急激に減少し300Kでは20%近くになることを観測した。これより、エポキシ樹脂の電子線照射によって生成したラジカルは寿命が長く比較的安定に存在することが分かった。 ラジカルの減少する温度は粘弾性測定からβ分散温度に対応していると推定されある特定の分子団の運動とラジカル減少との関係を追求することによって生成ラジカルを同定できる可能性が明かとなった。 従って、これらを基礎データとして、応力と放射線との同時効果によってエポキシ樹脂のラジカルの生成がどの様に変化するかを観測し、分子構造的変化を明らかにし同時効果のメカニズムを解明していく予定である。
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