放射線と応力とが同時に有機材料に作用した時に材料の機械的性質がどのように変化するかを明らかにするために、放射線照射下において試料の機械試験(曲げによるクリープとリラクセイション試験)を遂行した。 ◯平成6年度:1.試料には、工学的材料のGFRP(ガラス繊維強化エポキシ樹脂)とその母材であるエポキシ樹脂を使用した。2.放射線線源には、大阪大学産業科学研究所・放射線実験所のγ線(Co-60)と電子線(ライナック)を使用した。3.低温下(液体窒素中)照射装置を製作し、大線量率の電子線照射実験が可能となった。4.応力と放射線の同時効果によって、有機材料の劣化は、照射済材のものより、加速されることが明らかとなった。 ◯平成7年度:7.同時効果の反応過程を検討するために、変形速度の温度依存性を調べた結果、同時効果試験では照射済材試験のものより、見かけの活性化エネルギーが小さくなった。従って、同時効果と照射済み材との変形のメカニズムが異なっていることが分かった。 ◯平成8年度:8.放射線照射中のエポキシ樹脂の化学反応過程を調べた。(1)応力負荷材料、照射済材料、さらに同時効果材料のそれぞれについてラジカルの測定を行った結果、同時効果材は、照射済材よりもラジカル数が約10%多くなっており欠陥生成も多くなっていると推定できた。(2)粘弾性やスエリングの測定を行い分子鎖切断の評価を行った結果、同時効果によって約10%切断のG値が高くなり劣化が加速することが分かった。9.同時効果のメカニズムとして次の二つを提案した。(1)巨視的には一定速度の変形が現れていることからマックスウエルモデルの粘性として捉えた。架橋密度の低下、温度上昇や分子構造の変化で粘性係数の低下が起こる。(2)微視的には分子鎖切断の増加と、架橋の効果が現れ難いこと等によるためであると推定できた。
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