研究課題/領域番号 |
06650786
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
上村 税男 東海大学, 開発工学部・素材工学科, 教授 (10223504)
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研究分担者 |
千葉 雅史 東海大学, 開発工学部・素材工学科, 助手 (70236818)
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キーワード | 金属多層膜 / ガ-ネット磁性膜 / 熱酸化 / Fe / Bi(Y)多層膜 / rfマグネトロンスパッタ |
研究概要 |
金属多層膜の熱酸化による酸化物磁性薄膜作製の一環として、Fe/BiおよびFe/Y多層膜を取り上げ、その熱酸化によってガ-ネット磁性膜形成の可能性について研究を行った。多層膜はrfマグネトロンスパッター法を用い、ガラス基板およびSi単結晶基板上にFeとBi、FeとYを交互に積層することで作製した。その際、組成比はお互いの層厚比を変えることで種々変化させた。一方、熱酸化処理は、1気圧の酸素圧のもとで、400〜900℃の範囲の種々の温度で2〜4時間の熱処理を行った。 Fe/Bi多層膜を出発材料とした場合、熱酸化処理で形成される酸化膜は、X線回折等の結果、Bi_2Fe_4O_9、α-Fe_2O_3、α-Bi_2O_3、BiFeO_3の複合酸化膜が殆どであったが、わずかにBiの組成が44at.%の多層膜において、Bi_3Fe_5O_<12>のガ-ネット酸化物の混在が確認できた。次に、Fe/Y多層膜を出発材料とした場合、600℃以下の熱処理ではα-Fe_2O_3、Y_2O_3の混合膜が形成されるが、700℃での熱処理では特にYの組成が40at.%以上の場合、YFeO_3酸化膜が主に形成される。さらに、熱処理温度が800-900℃では、YFeO_3の他にY_3Fe_5O_<12>ガ-ネット酸化物が形成することがわかった。以上のことから、今回の研究では、Fe/BiおよびFe/Yどちらかの多層膜でもガ-ネット磁性膜を単相の状態で作製することはできなかった。しかし、今回の結果から、よりガ-ネット単相膜を作製するためには、熱酸化処理温度を1000℃以上の高温で行うことが必要なことがわかった。また、今回のスパッター法では、主にArガス雰囲気で行ったが、一部、酸素を少量混合してより活性な雰囲気のもとで多層膜を作製することも試みたが、その場合には酸化が促進されることがわかり、その後の熱酸化処理温度を低くする上で有効と考えられる。
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