研究概要 |
ブロンズ法Nb_3Sn線材により、4.2K(液体ヘリウム温度)で18Tの磁界が発生されているが、4.2Kで20Tを発生しうる超伝導線材はまだ開発されていない。本研究では、Nb_6Sn_5中間化合物を溶融拡散法で作製し、Nb粉末とボールミルにより機械合金処理する新しい製法によりNb_3Sn線材を作製した。えられた混合粉体をTaシースに充填して加工することにより、容易にテープ線材が作製出来た。上記の機械合金処理は熱処理におけるA15型超伝導相の生成を促進し、線材特性の改善に明瞭な効果があった。本製法で作製されたNb_3Sn線材は900℃で熱処理後、従来のブロンズ法Nb_3Sn線材より約5Tも高い、24.7Tの上部臨界磁界B_<c2>(4.2K)を示した。この高いB_<c2>は、本製法によるNb_3Snが大きい正常状態の電気抵抗を持つためと考えられる。少量のTi添加はさらにB_<c2>を高め、微量のGe添加は臨界電流密度J_cを増加させる。本研究では、4.2K、21Tで2.7×10^4A/cm^2のJ_cがえられた。一方、少量のCu添加は熱処理温度を850℃に低下させた。ついで本研究では、Nb_2(Al,Ge)中間化合物を出発物質として、同様な方法でNb_3(Al,Ge)テープを作製した。Nb粉末との機械合金処理を10h行った混合粉体を用いて作製したテープ線材は、1300℃で熱処理後、4.2K、23Tで2.7×10^4A/cm^2以上のJ_cを示した。本製法によるNb_3Sn線材とNb_3(Al,Ge)線材を比較すると、後者の方が高磁界特性は優れているが、必要な熱処理温度が高いため実用的には前者の方が有利であろう。本研究の結果4.2Kで20T以上の磁界発生が可能な特性をもつ超伝導線材を新しい製法により作製できた。今後その長尺化を目指した研究が望まれる。なお試料の高磁界特性は、東北大学金研強磁場共同利用施設で測定させていただいた。
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