リサイクルアルミニウム材に及ぼす特定不純物の表面処理および腐食挙動におよぼす問題を基礎的に研究した。再生二次地金の展伸材に不可避的に混入する鉄を取り上げ、アルミニウムの腐食過程におよぼす影響を実験的に調べた。まず、鉄含有量を変えた合金を製作し、その各々の分極測定を行った。金属間化合物(FeAl_3)として存在している鉄は単なる腐食過程における静的なカソードだけの役割を果たしているのは浸せき初期(0.1M NaClでは700時間位)だけであって、長期の浸せきでは金属間化合物中の鉄は溶出し、孔食内部では金属鉄に析出する。この析出した鉄は孔食内で有効なカソード部を形成する。孔食内のカソード反応は水素イオンの還元反応であるが、孔食の進行している部分には必ず水素発生が伴っている表面観察結果を説明することができた。理論的にはアルミニウムと鉄の金属間化合物(FeAl_3)の自由エネルギーを見積り、その電位-pH図を作成した。これからpH3-4で電極電位-0.5V位の範囲で溶解することが分かった。FeAl_3の電位-pH図を作成したことが実験的に得られた測定値の妥当性や実際に観察される諸現象の整理と説明を可能にした。しかし、FeAl_3自身の正確な自由エネルギーの値は求められていないので、生成エンタルピーで代用した。今後の課題としてアルミニウム系の金属間化合物の精緻な自由エネルギーのデータの蓄積と整備が望まれる。再生循環アルミニウム展伸材中の鉄は少なければ少ないほどアルミニウムの腐食に対しては有効となる。今後の問題として、金属間化合物の鉄とけい素の構成比による鉄の固定化が再生循環アルミニウム展伸材の現実への利用に当たって最重要課題になるものと思われる。
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