1.研究目的 高度の安全性と信頼性が要求される発電用原子炉では、装置を構成する金属材料の腐食損傷事故を未然に防止する対策の確立が急務となっている。そのためには、腐食環境である高温高圧水のpHを正確に知ることが不可欠であるが、この目的にかなう実用的pHセンサーは未だない。本研究では、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)板と固体基準電極とを一体化した高温高圧水用完全固体型pHセンサーを開発することを目的とした。 2.研究成果 (1)金属-金属酸化物複合薄膜を用いる固体基準電極の作製:Ag-Ag_2O、Cu-Cu_2OおよびNi-NiO系の金属-金属酸化物複合薄膜をイオンビームスパッタ蒸着法によってYSZ板の片面に形成した。 (2)固体基準電極の性能評価:作製したYSZ電極を用いて常圧用pHセンサーを作製し、368Kの各種pH標準溶液中でAg/AgCl(3.33M-KCl)照合電極との間の電位差を測定した。そして、pH0における電位差を各金属-酸化物系の平衡酸素分圧から計算される理論と比較した結果、Ag-Ag_2OおよびNi-NiO系の電位差は理論値と一致することが分かった。 (3)固体基準電極の内部抵抗測定:基準電極-照合電極間のインピーダンスを測定した結果、368Kにおけるインピーダンスは主にYSZの内部抵抗によって決定されるが、基準電極/YSZ間の界面抵抗の寄与もあり、これはNi/NiO電極が最も小さいことが分かった。
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