高度の安全性と信頼性が要求される発電用原子炉では、装置を構成する金属材料の腐食損傷事故を未然に防止する対策の確立が急務となっている。そのために、腐食環境である高温高圧水のpHを性格に計測できるpHセンサーが必要とされている。本研究では、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)板と固体基準電極とを一体化した高温高圧水用完全固体型pHセンサーの開発を試み、以下の成果を得た。 (1)金属-金属酸化物複合薄膜を用いる固体基準電極の作製と性能評価:Ag-Ag_2O、Cu-Cu_2OおよびNi-NiO系の金属-金属酸化物複合薄膜をイオンビームスパッタ蒸着法によってYSZ板の片面に形成し、常圧用pHセンサーを作製した。このセンサーの電位-pH応答を測定し、金属-酸化物系の平衡酸素分圧から計算される理論値と比較した結果、Ag-Ag_2OおよびNi-NiO系の電位差は理論値とほぼ一致することが分かった。 (2)高温高圧水用センサーの試作:Ni-NiO薄膜を基準電極に用いた高温高圧水用pHセンサーを作製した。Ti鋼製のボディーとPTFEによる絶縁シールを組み合わせたホルダーによってジルコニア電極を固定することで、温度300℃、圧力8.6MPaまでの高温と高圧に耐えられることを確認した。 (3)高温高圧水中におけるpHセンサーの特性評価:作製したセンサーを用いて、25〜250℃の各温度においてpH応答特性を調べた。pH変化に対する応答速度は温度の上昇と共に速くなり、250℃では1時間以内に定常状態に到達すること、250℃における応答電位-pH直線の勾配はNemst式にほぼ一致すること、などが分かった。
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