(1)金属過剰型酸化物としてTiO_2、Ta_2O_3、Fe_2O_3に着目し、金属Ti、Ta、Fe板を高温酸化することにより、これらの高温酸化皮膜を作製、さらに電極試料にしてNa_2SO_4溶液中にて光電気化学的挙動を調べた。TiO_2、Ta_2O_3、Fe_2O_3皮膜のいずれもフラットバンド電位を境にカソード分極下では光電流は流れず、アノード分極下で正符号の光電流が流れた。また、アノード分極下では電位上昇とともに光電流は上昇した。これらの結果は、予想していたようにTiO_2、Ta_2O_3、Fe_2O_3が正孔を少数キャリヤ-としていることを示している。TiO_2、Ta_2O_3、Fe_2O_3皮膜におけるフラットバンド電位は、pH5.6の溶液中でそれぞれ約-0.5、-0.25、-0.5Vであった。また分極電位1V(SCE)における光電流は、それぞれ1.3、0.1、0.6A・m^<-2>であり、TiO_2皮膜の光電流が最も大きいことがわかった。 (2)金属不足型酸化物としてCuO、Cu_2Oに着目し、金属Cu板を高温酸化することにより、外層にCuO、内層にCu_2Oから成る酸化皮膜を生成した。この皮膜をそのまま電極とすることによりCuOを表面とするCuO電極を、研磨することによりCu_2Oを表面とするCu_2O電極を作製し、それぞれのNa_2SO_4溶液中における光電気化学的挙動を調べた。CuO、Cu_2O皮膜ともフラットバンド電位を境にカソード分極下で負符号の光電流の上昇が観察された。この結果は、両皮膜がp型半導体であることを提示している。しかし、Cu_2O皮膜については、アノード分極下で小さいながら正の光電流も観察された。フラットバンド電位は各pHの溶液中でCuO皮膜の方がCu_2O皮膜よりも常に高い値を示した。CuO皮膜の光電位は各pHの溶液中で正の値を示したが、Cu_2O皮膜は溶液pHの範囲により符号が逆転した。
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