金属の高温酸化により作製した金属酸化物半導体皮膜の光電気化学的特性に及ぼす金属酸化物の不定比性制御の効果を調べた。金属酸化物皮膜における不定比性の制御は、金属酸化物皮膜に対する水素還元処理ならびに金属酸化物皮膜作製時における酸素分圧の制御により行なった。Tiの高温酸化により作製したn型半導体のルチル型TiO_2皮膜については、水素還元ならびに皮膜作製時における酸素分圧の低下により酸化物イオン空孔の導入を行なった。TiO_2皮膜の光アノード電流は水素還元温度が高いほど、また皮膜作製時における酸素分圧が低くなるほど高くなった。これは皮膜中に酸化物イオン空孔を導入することにより光アノード反応が活性化することを示している。同様にTaの高温酸化により作製したn型半導体のβ-TaO_2O_5皮膜においても、水素還元時における温度を上昇させることにより光アノード電流が増大することが認められた。これらの結果により、n型半導体酸化物においては酸化物中に酸化物イオン空孔が導入されることにより光アノード反応が活性化することがわかった。Cuの高温酸化により作製したp型半導体のCu_2O皮膜においても酸化物イオン空孔が導入される程度の弱い水素還元により光カソード反応がわずかに活性化した。 このように、酸化物半導体における酸化物イオン空孔の導入は、伝導型式を問わずこの半導体の光電気化学反応を活性化することが明らかになった。これは、酸化物イオン空孔の増加が表面準位となる皮膜表面における過剰金属イオンの増加に対応するため、表面準位を経過して起こる光電気化学反応速度が増大することによると考えられた。
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