研究概要 |
Y-TZP(イットリア部分安定化正方晶ジルコニア多結晶体)およびY-TZP/Al_2O_3複合多結晶体から試験片を切り出し、大気中において、温度範囲1350〜1550℃,初期ひずみ速度10^<-4>〜10^<-2>s^<-1>の範囲で引張りおよび圧縮試験を行った。引張り及び圧縮変形を種々のひずみ点で中断して、試験片の変形前後のかさ密度変化をアルキメデス法で、また組織変化を熱腐食させた試験片表面のSEM観察を行って調べた。そして粒界空隙の発生量,ひずみ誘起結晶成長と粒アスペクト比の変化を、変形温度,ひずみ速度,初期組織を変数として調べた。 その結果、粒界空隙の体積率のひずみ依存性は、変形温度が低いほど,ひずみ速度が大きいほど,初期粒径が大きいほど大きくなることが分かった。一方、ひずみ誘起粒成長のひずみ依存性は、粒界空隙の場合とは逆の変形温度,ひずみ速度,初期粒径依存性を示した。また、種々のひずみ点まで超塑性変形させた試験片の曲げ強さ,硬さ,破壊じん性,アイゾット衝撃値を調べた。その結果、これらの機械的性質は粒界空隙量と強い相関を示し、粒界空隙量が多いほど曲げ強さや硬さおよびアイゾット衝撃値は低下した。一方、IF法により測定した破壊じん性は上昇することが分かった。さらにISB法によっても破壊靱性を測定したが上記と銅との結果が得られた。これらの結果から、Y-TZPの場合粒界空隙量が1%以下であるならば、超塑性変形後の機械的性質の低下は実用状問題ないことが推定された。 一方、Y-TZPにAl_2O_3を20%複合した3Y-20A材の場合、粒界空隙形成のひずみ依存性はY-TZPと比較して数倍大きく、超塑性加工により粒界空隙が発生し易いことが分かった。しかし粒界空隙量が体積率で同じ場合で比較すると、3Y-20AはY-TZPより硬さ,曲げ強さ,破壊靱性いずれも大きな値を示すことが分かった。 以上の結果より、超塑性加工に起因する粒界空隙量の体積率が1〜2%以下ならば機械的性質の劣化は実用上あまり問題ないものと推定された。
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