研究概要 |
高効率廃棄物発電環境で問題となる溶融塩化物および硫酸塩に対するNi基(一部Fe基)合金の耐食性に及ぼす合金元素の影響を明かにするため,3種類の溶融塩(塩化物,硫酸塩,それらの混合塩)を腐食灰とし,31種類の合金(18種類の市販合金,13種類の研究室内での溶製合金)を試料として用い,等研究室で開発した交流インピーダンス法の原理に基づいた迅速評価法および従来の高温腐食の評価に用いられている腐食灰塗布法により450〜600°Cの温度範囲で耐食性評価を行い,以下の成果を得た. 塩化物溶融塩に対しては,Crの添加はむしろ耐食性を劣化させる結果となった.これは塩化物環境で安定なCr_2O_3皮膜が形成されにくいことを意味するものである.一方,硫酸塩に対する耐食性は20%以上のCrの添加が有効であり,Moの添加は耐食性を劣化させることがわかった.また,塩化物と硫酸塩の混合塩環境に対しては,CrおよびMoの添加が極めて有効であり,その他にもNbの添加も有効でありあることが腐食データの回帰分析からわかった.交流インピーダンス法による評価結果は従来の塗布法による試験結果とよく一致したことから当研究室で開発した高温腐食用の迅速評価法の信頼性が裏付けられた. 本研究で用いた3種類の溶融塩では,硫酸塩が他の塩化物を含む2種類の溶融塩に比べて腐食性が低い(約1/10程度の腐食速度)ことが塗布試験により示された.これにより,焼却炉環境での材料の耐食性を評価する場合には,塩化物あるいは硫酸塩・塩化物混合環境での評価結果に基づいておこなうのが妥当であることが示された.試験した18種類の市販合金のなかでは,高Cr,高Mo合金であるAlloy625およびAlloyC-22が比較的すべての溶融塩環境で優れた耐食性を示したことから,この環境での材料として有望である.
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