研究概要 |
31%ニッケル鋼における微細結晶粒組織の動的並びに静的形成過程とそれらのマルテンサイト変態特性に及ぼす影響を実験的に明かにして、次ぎに示す諸結果を得た。 1.オーステナイト領域において圧縮による変形中断-再負荷試験を行い,高温変形後の回復・再結晶過程を明らかにした。動的回復後の静的軟化曲線は、回復と再結晶に基づく2段過程を経て、完全軟化に至る。動的再結晶後のそれは、3段階からなる過程を経て実験の範囲内では完全軟化に至ることはない。後者における粒成長は前者に比べて著しく抑えられる。これより、動的再結晶を利用する微細粒組織形成の基本的条件が明かとなった。 2.高温変形組織とその静的回復・再結晶組織からのマルテンサイト変態特性を、変態開始温度Ms点,変態量Vαと温度との関係,変態生成組織に注目して系統的調査を行なった。動的再結晶後のMs点とその付近で生じるVαは静的再結晶に比べて常に大である。動的、静的両再結晶組織に係わらず、Ms点とVαは結晶粒径の増加とともに増加することが明かになった。 3.Vαは購入した管球を用いたX線回析法により、また変形組織やマルテンサイト組織の電子顕微鏡による観察では、今回購入した試料回転ホルダーを用いて高精度に行なうことが出来た。
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