プラズマ溶射された粒子の平面基材上での偏平挙動支配因子の解明に対し、Niを含む種々の金属粒子の基材温度の変化に伴う粒子偏平挙動の変化を基礎的に調査した。 初めに、Ni溶射粒子の基材上での偏平挙動を調べた結果、基材温度の上昇に伴い粒子偏平形態には極めて特徴的な変化の様相が認められた。すなわち、基材温度の上昇に伴い、約600Kの基材温度を境に粒子偏平におけるスプラッシュ発生が抑制される円板状の形態へと急激に遷移する傾向が明らかになった。そこで、このような偏平形態の遷移する基材温度を偏平形態遷移温度:Ttと定義した。Ni粒子の場合のTtは約610Kであった。 その他の粒子について同様の実験を行った結果、Al、Tiには観察温度範囲ではスプラッシュは発生せず、偏平形態の遷移は認められなかった。一方、Cr、CuおよびMoにはNiと同様に偏平形態の遷移が認められ、偏平形態遷移温度も粒子材質によって異なることがわかった。 各粒子の潜熱の比較および粒子裏面観察結果より、スプラッシュの発生には、粒子の基材付着直後の瞬時の凝固挙動が強く関与していることがわかった。粒子偏平凝固の簡易モデルを提案し、粒子偏平形態遷移現象について考察した結果、粒子の基材衝突初期の急速凝固と表面張力との関係で、スプラッシュ発生の難易の傾向が説明された。従って、未知の粉末に対しても、初期凝固時間と表面張力の値を求めることにより、基材上での偏平挙動の類推が可能となった。
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