研究概要 |
活性経路アノード溶解型応力腐食割れ(SCC)として、鋭敏化SUS304鋼の常温ポリチオン酸SCC中の8チャンネルAEモニターリングを行なった。縦波放射パターンおよびモメントテンソル解析を行なった結果、破壊モードの異なる半連続的多段階(2-3段階)破壊が発生していることを初めて明らかにした。極めて短い(1‐2μs)潜伏時間を持つ破壊モードの異なる多段階破壊のため、全てのセンサーが最初の破壊による縦波を捉えられないため、モーメントテンソル解析は異常な値を示す。このことをふまえ、破壊モードの異なる2段階破壊を考えてシミュレションした面外変位は、実測変位を良い一致を示すことを明らかにした。一方、事例の多いSUS304の塩化物割れ中のAEモニターリングは、高温沸騰塩化物溶液(BP=145C,42%MgC12)では、センサーの破壊をもたらすこと、沸騰ノイズが多いことからこれまで計測は不可能であったが、初めて、AEモニターリングと原波形解析を行ない、数は少ないものの脆性的な高速破壊が関与していることを明らかにした、またこの研究では、半無限体に対して適用可能な第2種グリーン関数を用いる従来法でなく、小さな試験片の実験的応答関数決定法を提唱した。すなわち、step unloading入力にたいする第1種応答関数を、ダイポール(破壊)現象に対する第2種応答関数に変換し、試験片に即した応答を計算した。計算変位は、実測変位を良い一致を示すことからこの方法の有効性が立証され、脆性破壊が関与していることがわかった。また、高温溶融塩による損傷中に高速破壊が発生しているがを検討するため、600Cまで耐用できる高温変位センサーを世界で初めて開発した。このセンサーを用いて、都市ゴミ発電プラントでの模擬溶融塩化物による損傷と銀ろうによる高温損傷をモニターした結果、高速の粒界破壊が発生すること、破壊はgrain boundary decohesionによる可能性が高いことを明らかにした。
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