今年度の成果及び今度の課題は以下のとおりである。 1.高融点ろう材の試作 Mo-Ru-B合金については、素材の加工性が極めて悪い理由により焼結法による板状ろう材の試作を放棄し、ペースト状ろう材を用いることとした。この場合、原料合金粉末の均一性・微細粒化および適切な有機溶媒の選択が重要であった。またボロン添加量として1〜5質量%が最適であった。これにより、Mo-Ru合金ろう材を用いて接合したモリブデン単結晶に比べて破断強度・延性共に改善できた。その理由としてろう付け層内の組織の均一化・微細化、ボロン自身による靱性改善効果などが推察される。本手法は技術的に非常に簡便なものであり、今後の使用が大いに期待できる。 一方焼結法により試作したMo-Ru-Ni合金の板状ろう材を用いてモリブデン単結晶同士の接合を行ったところ、Mo-Ru合金を用いた場合に比べて接合継手の強度が著しく低いことが明らかとなった。ただし本ろう材はMo-Ru合金に比べてろう付け温度が約300K低いという実用面での利点がある。 2.高融点金属単結晶とセラミックスの接合 ろう材としてパラジウムを用いてモリブデン単結晶と炭素系複合材を接合する場合、予めセラミックス表面にジルコニウムを溶媒被覆することにより100MPa以上の実用的な強度を得ることができた。走査型電子顕微鏡を用いた破断面の観察により、破壊の開始点および破断個所はろう付け層ではなくてセラミックス素材内に少しだけ入った部分であった。組成分析によれば、この部分にろう材成分であるパラジウムが浸入しており、また複合材成分のシリコンが減少し相対的に炭素が増加していることが明らかにされた。このような複合材内へのろう材成分のある程度の浸入はろう材とセラミックスとのぬれ性に依存し、界面強度の改善に寄与しているものと推察される。今後の課題として、セラミックス素材の強度がより高いものを使用することあるいはパラジウムと同等あるいはそれ以上に湯流れ性の良好な貴金属系ろう材を使用することが考えられる。
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