本研究では最小木解析を凝固組織の配列構造や不均一性の評価に適用することを試みた。このため、まず性質が既知である2次元点配列のモデルパターンを作製し、最小木解析の適用範囲や留意点を検討した。 その結果、最小木の枝の平均値-標準偏差より点配列の構造が、枝長さヒストグラムから短範囲の距離分布が、枝角度ヒストグラムから短範囲の位置分布が評価できることが分かった。また、解析の留意点として、解析試料のサンプル点数とほぼ同数の点からなるモデルパターンを用意する必要があることが明らかになった。しかし、最小木解析は、対象の点配列がモデルパターンに一致することの十分条件を与えないので、枝長さと枝角度ヒストグラムを併せて比較し、配列の解析をより正確に行う必要があることが分かった。 凝固組織の空間分布解析の例として、最小木により一方向凝固試料のデンドライト主軸配列を解析した。その結果、デンドライト主軸配列は正方禁則モデルに近いことが分かった。また、温度勾配が高くなるにつれ主軸配列の乱れは小さくなり、配列自身も格子状配列に移行することが分かった。これらの結果から、最小木解析がデンドライト主軸間隔の測定や配列構造の評価に有効であることが示された。さらに、急速凝固した試料の表面核発生点の分布を最小木により解析し、加熱度が小さい場合には、核発生点配列は溶湯の流動方向に周期性を持ち、加熱度が大きい場合には配列がランダムになることが分かった。
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