研究概要 |
溶融スラグ・フラックス或いはガラス融体の粘度は、温度の変化に応じて溶融状態から固体状態に至るまで広域にわたって変化する。これらの融体の粘度は、金属精錬やガラスの成形・加工などの操業上での反応の速さや流動性に影響する制御因子の一つとして重要であり、また精錬プロセスにおける諸現象のモデルを解析するうえでも必要な基礎物理量である。そのため、粘度の正確な測定は学問的にも実用的にも重要な意味を持つ。本研究では、比較的測定可能な粘度範囲が広い外円筒回転式の粘度測定装置を作製するとともに、自作した装置の高温における検定を目的として、比較的底融点であるB_2O_3-Na_2O-SiO_2系融体の粘度測定を行った。 得られた結果は、以下のとおりである。 (1)室温で粘度が既知の標準試料を用いて装置定数に及ぼす各種因子(懸垂線の材質,長さ及び直径、るつぼの形状、るつぼの回転数、ロッドの浸漬けなど)の影響を調べ、最適測定条件の確立を行った。その結果、溶融スラグ・フラックスの広範囲な粘度範囲(10^<-2>〜10^2Pa・s)での測定が十分可能であることがわかった。 (2) B_2O_3-Na_2O-SiO_2系融体の粘度測定を行い、従来の報告値と比較検討した。その結果、高温での測定の再現性も良く、溶融スラグ・フラックスの粘度の測定温度域である1000〜1600℃でも測定が十分可能であることがわかった。 (3) B_2O_3-Na_2O-SiO_2 三元系の等粘度曲線および[BO_3]-Na_2O-[SiO_2+BO_4]擬三元系の等粘度曲線を作製した。これらの結果から、B_2O_3はB_2O_3濃度が高い領域では酸性的な挙動をし、B_2O_3濃度が低い領域では塩基性的な挙動をするものと推定された。
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