研究概要 |
1.あらかじめアルミニウム脱酸した鉄試料を再溶融し超急冷を行った試料中には,直径が50nm程度の微小な球状のアルミナ,ハ-シナイト,FeO介在物が観察された.水冷した場合には0.5μm程度の同様な球状介在物が観察され,冷却速度が大きいほど径が小さく,2次介在物だと考えられる.透過型電顕(TEM)での回折パターンから,アルミナ球状介在物はδ,γ-アルミナだと同定された.急冷の際に,オストワルドのステップルールに基づき,会合体アルミナが不安定な固体δ,γ-アルミナに変化したと考えれば,介在物が安定なα-アルミナでないことの説明はつく.なおアルミニウム濃度が高くなるとFeO球状介在物は減少し,アルミナ球状介在物は逆に増加する. 2.炉中で昇温した電解鉄中にアルミニウム脱酸剤を添加し超急冷を行った試料からは,ミクロンオーダーの紅葉状,デンドライト状,棒状,クラスター状,網目状,球状など様々な形態の脱酸生成物が観察された.脱酸剤添加後の時間経過を追った場合にも(〜1hr.)同様な介在物が観察され,微小な球状介在物は観察されなかった.これは添加した脱酸剤が試料上面に浮くため試料底部までアルミニウムが十分に拡散せず,常に脱酸初期の状態を観察した結果だと推測され,これらの様々の形態の介在物は一次介在物だと考えられる.電解鉄,脱酸剤を共に1600℃の炉中に投入した場合には,脱酸剤と電解鉄の混合性が良く,この方法で得た試料中には網目状アルミナ介在物と共に微小なFeO,ハ-シナイト,アルミナ球状介在物が観察された.この場合脱酸剤添加後の時間経過と共に微小なFeO球状介在物は減少し,アルミナ球状介在物が増加する. 3.ヨウ素メタノール法によりろ紙上に抽出した微小な介在物を,抽出レプリカの手法を用いて,簡単にTEM観察できる方法を考案した.
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