(1)装置の改善 一次脱酸生成物あるいは二次脱酸生成物が坩堝中のどの部分で生成するのかを確認するため、炉の下部の超急冷用のローラーボックスを水槽と交換できるように装置を改良した。これにより、アルゴン雰囲気で試料を坩堝ごと水冷できる。 (2)介在物の観察 (1)昨年、溶鉄の上部にアルミニウムを添加して溶鉄中にアルミニウムを拡散させた試料の超急冷試料からはデンドライト状、紅葉状等サイズの比較的大きな(数μmから十μm)介在物が観察されていたが、微細な球状介在物が観察されていなかった。今回同じ試料を昨年考案したTEM観察試料作成法に基づき観察したところ、非常に微細(数nm〜数十nm径)なFeO・Al_2O_3の球状介在物が観察された。 (2)(1)と同様な試料を坩堝ごと水冷し観察すると、坩堝下部ではFeO球状介在物、中部ではFeO・Al_2O_3球状介在物(数百nm〜1μm径)が観察された。上部にはデンドライト状、クラスター状(数μmから十μm)の(1)デンドライト状等の介在物と同サイズレベルのものが観察された。アルミニウム濃度は上部で高く下部では非常に低い。従って溶鉄中へのアルミニウム拡散の最前線付近にFeO・Al_2O_3が生成しているといえ、これが一次脱酸生成物である様々な形状の比較的大きな介在物の生成の前段階に存在し、一次脱酸生成物の生成に重要な役割を果たしていると考えられる。なおこのFeO・Al_2O_3介在物は冷却速度とともにそのサイズが変化しており二次介在物と考えられる。 (3)電解鉄(0を100ppm程度含有)を1600℃で溶融し超急冷あるいは水冷した試料中にFeOの球状介在物が観察された。この溶融Fe-O合金液体は酸素飽和濃度以下の組成にあり、FeOは原理的に二次介在物である。これらはアルミニウム脱酸鉄を超急冷、水冷した試料中の介在物とサイズ、形状がほぼ等しい。
|