FeCl_2を用いて溶鉄中の銅を除去する一連の研究のうち、今年度は、酸素ポテンシャルおよび塩素ポテンシャルの影響を調べた。 FeCl_2の投入方式はキャリアガスを用いず、プランジャにFeCl_2を粉末に充填し、溶鉄中に投入する方法とし、酸素ガスの代わりに酸化鉄を用いた。ここで発生した塩化銅は、溶鉄表面に送る窒素ガスによって系外に取り去ることができる。ここでも、反応速度は銅濃度に対する見かけの一次反応として整理でき、その見かけの反応速度定数はキャリアガス法のそれとほぼ同等の値になった。 次に、FeCl_2に少量のFe_2O_3とFeCl_3の混合粉体を用いて塩素ポテンシャルを制御した。すなわち、FeCl_2とFeCl_3の混合比を変え溶鉄中に1回だけ投入し、その脱銅率を調べた。FeCl_3の添加の効果はFeCl_3/FeCl_2の値の小さいうちは、この値が大きくなるにつれて見かけの反応速度定数は大きくなり、FeCl_3/FeCl_2の値が2.5で極大値を示し、さらにFeCl_3/FeCl_2値を大きくすると見かけの反応速度定数は小さくなる。これより、最適FeCl_3/FeCl_2の値の存在することが明らかとなった。そして脱銅の見かけの反応速度定数はFeCl_3のない時の約4倍大きくなった。すなわち、FeCl_2にFeCl_3と酸素源を添加すると、見かけの反応速度定数は、FeCl_2単独の場合の約12倍になることが明らかとなった。また反応の律速段階は、溶鉄中の銅の反応界面への移動過程の可能性が大きいと思われる。
|