滴状凝縮現象は蒸気・伝熱面間温度差Δtを大きくして行くと、滴状から遷移凝縮を経て膜状凝縮へと移行し、その際の熱流束は凝縮曲線と言われるN字状のカーブを描く。また、その膜状凝縮の状態から、逆にΔtを減少させると、遷移凝縮領域に於いて、熱流束は同じ経路はたどらず、いわゆる履歴現象を呈する。それ故、滴状凝縮現象を実現した凝縮器を負荷変動の激しい系で運用した場合を考えると、遷移凝縮領域に於ける熱移動機構を解明することは極めて重要である。所で、凝縮曲線を実験的に求める場合には、伝熱面に設置された1本の熱電対温度計でΔtの片側を決定するのが常である。しかし、滴と膜とが混在する遷移凝縮領域では、その1本の熱電対が滴部にあるのか、或いは膜部にあるのかによって、Δtは大きく変化するため、凝縮曲線もまた、大幅に変化する。 本研究では、履歴機構解明に至る一段階として、その基本となる凝縮曲線を得るためには、如何なる方法が妥当であるかを実験的に検討した。 試料伝熱面には凝縮曲線の再現が比較的容易であり、且つ工業的にも重要な粗面を用いたが、実験はステンレス製蒸気ダクトの一壁面に、3ないし5本の熱電対を挿入した試料伝熱面を設置し、その面上で遷移凝縮を起こさせることにより行った。凝縮曲線は、伝熱面の液膜による被覆率、滴及び膜部の伝熱面温度より伝熱面の平均温度を求め決定したが、被覆率については写真撮影により求めた。 その結果、遷移凝縮領域の凝縮曲線は、Δtの比較的小さな領域では既往値よりも右方向へ、またΔtの大きな領域では左方向へシフトし、全体として勾配はかなりきつくなることが分かった。
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