晶析装置の設計に際しては、2次核発生速度を正しく推定しなくてはならないが、理論的計算にのみに頼ることは不可能で、実験室の小型装置で得られた速度を大型の実装置に(スケールアップ効果を考慮して)適用する方法を取らざるを得ない。しかし、この方法すらも出来ないのが現状である。本研究は、この現状を打開すべく行った。晶析装置内における2次核の発生は、主として撹拌翼と結晶粒子の衝突に起因する。そこで、先ず電気化学法およびクレヨン法により粒子・撹拌翼表側間の衝突頻度を測定した。前者の方法は全衝突頻度を、後者の方法はある臨界値以上の衝突強度をもつ衝突の頻度を検出することが出来る。2次核発生には強度の高い衝突が直接影響すると考えられたので、後者のクレヨン法のデータを、衝突効率(理論衝突頻度に対する実衝突頻度の比率)とストーク数(撹拌速度、撹拌槽、撹拌翼寸法、粒子径、粒子密度、流体密度、流体粘度を考慮した無次元数)の関係として実験式に整理した。これにより、衝突頻度に対する装置スケールアップ効果を計算することが可能になった。次に、2次核発生速度がこの衝突頻度に比例するとした2核発生モデルを考案し、カリミョウバンに対する実測2次核発生速度をこのモデルを用いて、装置容積、撹拌翼寸法、撹拌翼先端の周速度(チップスピード)、を含むパラメーターと相関した。その結果はほぼ満足されるものであった。すなわち、実験に用いた撹拌槽のスケールアップ比率(約30倍)の範囲で2次核発生速度のスケールアップ効果をほぼ予測できた。しかし、装置容積最大(50リットル)の場合、データの相関が少し劣った。この点の改良が今後の課題である。
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