研究概要 |
生物工学的な材料である酵母および高圧縮性物質である寒天ゲル粒子スラリーの定圧濾過実験を行った。特に,ゲルケ-ク層内の液圧分布を,超小型圧力センサーを組み込んだ新しい濾過装置を用いて実測した。その結果,酵母および寒天ゲル粒子のケ-クの圧縮性指数として,それぞれ0.54および0.93の値が得られ,これは,実測した液圧分布の無次元化曲線の形状比較結果ともほぼ良い対応関係を示した。 また,アクリル製濾過器の底部に3対の白金線電極を取り付け,電気電導度法を用いてケ-クの空隙率分布を実測した。サブミクロンポリスチレンラテックス粒子についての測定より,本装置の健全性を確認ののち,タンパク質試料である牛血清アルブミン溶液を用いて定圧限外濾過実験を行った。膜近傍におけるタンパク質ゲル層の形成過程を良好に測定することができ,ゲル層の平均空隙率を算出した。 定圧濾過実験結果から得られた平均濾過比抵抗および平均空隙率対濾過圧力の関係を圧縮透過データ,すなわち,部分濾過比抵抗および部分空隙率対圧縮圧力の関係に変換し,圧縮性ケ-ク濾過理論に基づいてシミュレート計算を行った。その結果,理論推定計算値は本研究で実測した全てのスラリー,すなわち,カオリン,酵母,寒天ゲル粒子,ポリスチレンラテックス粒子スラリーおよび牛血清アルブミン溶液に関する実験結果とかなり良い一致が得られた。 以上の結果より,ケ-ク濾過理論が限外濾過のレベルまでその拡大適用が可能なことが明らかとなり,本推定計算法が濾過器のスケールアップや濾過プロセスの設計など,その工業的応用において大きな寄与を与えることが示唆された。
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