中程度の圧縮性スラリーについて圧縮透過実験を行い、圧縮透過特性を実測した。同一のスラリーの定圧濾過実験を行って定圧濾過特性値を求めるとともに、濾過理論に従って圧縮透過特性を推定した。これらの結果を用いて、濾過ケ-クの総括的な濾過特性値を数値計算法によって理論的に求め実測値と比較したところ、定圧濾過実験値からの推定値が実験結果をよく再現した。さらに一般性を高めるために、生物工学的な材料である酵母および高圧縮性物質である寒天ゲル粒子スラリーの定圧濾過実験を行った。特に、ゲルケ-ク層内の液圧分布を、超小型圧力センサーを組み込んだ新しい濾過装置を用いて実測した。その結果、実測した液圧分布の測定値は、各々のケ-ク圧縮性に対応した曲線形状を示した。また、タンパク質溶液の定圧限外濾過実験における膜近傍ゲル層の電気電導度を白金線電極法を用いて良好に測定することができ、ゲル層の平均空隙率を算出した。定圧濾過実験結果から得られた平均濾過比抵抗および平均空隙率対濾過圧力の関係を圧縮透過データ、すなわち、部分濾過比抵抗および部分空隙率対圧縮圧力の関係に変換し、圧縮性ケ-ク濾過理論に基づいて理論推定計算を行った。その結果、計算値は本研究で実測した全てのスラリー、すなわち、カオリン、酵母、寒天ゲル粒子、ポリスチレンラテックス粒子スラリーおよび牛血清アルブミン溶液に関する実験結果とかなり良い一致が得られた。 以上の結果より、ケ-ク濾過理論が限外濾過のレベルまでその拡大適用が可能なことが明らかとなり、総括的な濾過テスト結果に基づく本推定計算法が、濾過器のスケールアップや濾過プロセスの設計など、その工業的応用において大きな寄与を与えることが示唆された。
|