無機膜は、耐熱性、耐薬品性及び機械的強度に優れるなどの特徴を有すので、高温で過酷な条件における分離膜として期待でき、特に、反応と分離の機能を兼ね備えた膜型反応器に無機膜を使用できれば省エネルギープロセスとなる。膜型反応器による有機化合物からの脱水素触媒反応を実プロセスとして発展させるためには(1)過酷な反応場において使用できる化学的、機械的に安定な機能性無機分離膜を創製すること、(2)有機化合物の脱水素反応では避けられない炭素析出(コ-キング)による触媒劣化に対する有効な対策をたてること、が重要である。本年度は膜型反応器に使用するパラジウム・アルミナハイブリッド薄膜を酢酸パラジウムを原料として、強制流動気相合成法により作成し、そのスケールアップを行った。優れた水素分離性能を有すこの膜は、透過速度も極めて速く、加えて水素脆化に強い構造を実現できた。また、360℃の温度で有機硫黄あるいは有機塩素化合物(数100ppm)を含む気流と100時間接触させても、水素の透過速度に変化がなかった。アルコキシド法により高い芳香族炭化水素収率が期待できるガリウムシリケート触媒を調製した。膜型反応器に使用するため、管軸方向に5‐10cmの長さにわたってピンホールのないパラジウム・アルミナハイブリッド薄膜を作成し、この膜の周辺部にガリウムシリケート触媒を充填した膜型反応実験システムを完成し、触媒反応実験を行った。
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