今年度では主に新規な有機無機ヘキサメタリン酸金属塩の合成を行なった。現時点では固体材料への完全なキラル性の導入までには至っていないが、その前駆体となり得る新規な固体リン酸塩の合成に成功した。また有機不斉分子を固体リン酸塩に構造的に取り込んだ新規な結晶の合成にも成功した。これらはすでに構造解析を終えており、環状ヘキサメタリン酸イオンと触媒活性点となり得る遷移金属イオンが酸素-金属イオン-酸素ーリンの結合を介して、交互に連結した鎖状構造をなし、この鎖が有機イオンによって連結され3次元ネットワークを形成している。さらに、この金属イオンの周りにはアミンが配位しており、金属イオンを中心に見れば有機配位子とポリリン酸イオン配位子からなる金属錯体が形成され、それぞれが結合して錯を形成したものとなっている。中心となる金属イオンは多数のものが可能で、特に三価の金属イオンでは脱離が容易な配位子を導入することができ、触媒活性点を発生させる上で有利となり、触媒調製の面では一つの山を越すことができた。 上述のようにキラル性固体を創製する上での基本物質となり得る固体の合成にはすでに成功し、触媒能を持たせることは可能となっている。現在、活性点に反応分子がアクセスできる程度の空間をもった形での3次元ネットワーク化の方法を検討している。これまでに合成した物質にはすでに有機分子が存在しているので性分子を結晶内に配置することは容易であるが、ネットワーク化する際に全体がキラル性を示すのに有効なキラル分子を決定するのは多くの研究を要している。
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