1.本研究では、(1)ATM研究に適した適切なモデル触媒系の構築、(2)その調製方法の確立、さらに(3)その表面原子のトンネル物性の測定を通じて、(4)STMを実用固体触媒機能の原子レベルでの解明に応用する途を拓くことを目的とした。 2.上の目的にしたがって、本年度は以下の研究を行った。 (1)担持金属触媒のモデル系の構築:実用的に最も多用されている固体触媒系として、酸化物と金属超微粒子とを複合させたいわゆる担持金属触媒のモデル系を構築した。担体系としては工業的に最も重要なシリカ、アルミナを主な対象とした。金属触媒としては、これも工業的に重要な白金、パラジウムなどの貴金属系を主とした。 (2)モデル担持金属触媒系の調製手法の確立:これらモデル担持金属触媒系の試料形態および担持条件を検討してその調製手法を検討し、これにより調製された各試料のSTMトンネル条件の最適化を行った。 3.その結果、以下の成果を得た。 (1)STMでは通常絶縁性物質の像は得られていたが、シリカのような誘導体においても厚さ1nm以下の薄膜にすると充分トンネル電流を検出することができた。 (2)同様にしてアルミナ薄膜もSTM観察の対象となり得ることを示した。
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