1.反応器の試作と運転 初年度には、10気圧・600Kを目標に高温・高圧で赤外吸収スペクトルを測定できる反応器を設計・試作し試運転を行った。二酸化炭素の水素化によるメタノール合成を行い、本反応器が所期の性能を発揮すること及び実際に反応条件下で得た担持銅触媒のスペクトルを解析し、銅上に生成した蟻酸種が、反応中間体であるとする我々の説を支持する結論を得た。この内、反応器の設計及び試作と操作上の要点を化学工学誌において公表した。 2.メタノール合成用触媒の設計 平成7年度は、実際の触媒設計への応用として、銅上の蟻酸種の反応性を制御する目的で、メタノール合成への担体効果を検討した。銅の電子状態を過剰にすると、中間体の数が増加し、一方電子不足にすると、銅上の蟻酸酸種が不安定性となり水素化を受けやすくなるとの作業仮説に基づき、さまざまな酸・塩基性質を有する担体の効果を系統的に検討した。チタニア担体が優れた効果を発揮し、この場合チタニア上の蟻酸塩も反応に関与する可能性を指摘した。こうした成果はRes.Chem.Intermed.誌において公表した。 3.二酸化炭素水素化の生成物分布の制御 前項の結果、銅上の蟻酸種の制御が設計に有用である事を示した。さらに広範囲に生成物の分布を制御すべく、(1)酸・塩基成分の添加、両性成分の添加など助触媒の設計によるメタノール生成活性・選択性の向上(2)炭素鎖形成能を有する金属や水素可能を有する金属などの添加による二元機能の設計による、高炭素鎖生成物やエタノールなど含酸素化合物の合成などを試み、その可能性を見いだした。これらの成果を第76回触媒討論会にて公表した。
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