研究計画の段階で予測したように、多孔性ガラスの細孔径は、添加する金属のイオン半径と酸素との結合力によって決定し、これがアルミニウムのそれと同一程度に大きさであるときは、ホウケイ酸ガラス内での酸素の拡散速度が大きくなり、Na_2O-B_2O_3相とSiO_2相への分相が進行して、適当な大きさの細孔径を有する多孔性ガラスが得られた。しかしながら、イオン半径と酸素との結合力がアルミニウムのそれよりも小さくなると、拡散速度が大きくなり過ぎて、幅広い細孔分布となった。一方、イオン半径と酸素との結合力が大きくなると酸素の拡散が阻害され、結果としてホウケイ酸ガラスの分相が抑制されて、得られる多孔性ガラスの細孔容積が小さくなった。このように多孔性ガラスが生成するメカニズムをある程度解明することができた。 生成した多孔性ガラスの細孔径をアルミナ添加のガラスよりも大きくするにはジルコニアの添加が有効であり、細孔径と細孔容積を制御するには添加するジルコニアの量を変化させることで実現できた。ジルコニアを加えたホウケイ酸ガラスから調整した多孔性ガラスの細孔径は2〜4nmであり、これはタンパク質のような大きな分子径を持つ物質の分離あるいは反応に利用できると考えられる。 ホウケイ酸ガラスに第4成分として、少量の金属酸化物を添加することによって、生成する多孔性ガラスの細孔径が制御できることは、筆者らが初めて明らかにしたものであり、これらの研究成果をまとめて、J.Microporous Materialsに投稿したところ掲載許可が得られた。
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