ホウケイ酸ガラスに少量のアルミナを添加することによって、多孔質ガラスの細孔径が変更できることについては、平成6年度の研究結果で明らかになった。平成7年度は、上記の手法で調製した多孔質ガラスにイオン交換法で白金を担持し、これを使用して炭素数が6から10までの1-オレフィンの水素化反応を行い、反応速度に及ぼす細孔径の影響について検討した。その結果、アルミナ含量が3%以下のホウケイ酸ガラスから調製した多孔質ガラスでは、反応速度は同一であったが、アルミナ含量が4%を超えると、水素化反応速度は炭素鎖の長さと共に直線的に減少した。この結果から、アルミナ含量の小さなときには細孔径の減少度も小さいが、4%を超えると急速に減少して行くことを示している。 調製した白金触媒の細孔分布を測定したところ、アルミナ含量の増加と共に細孔分布は、シャープになった。これから平均細孔径を算出し、この値と1-オレフィンの最長分子径の比と水素化反応速度との関係を求めた。そして、見かけの反応速度がすべての炭化水素に対してKnudsen拡散によって支配されると考えて速度解析を行い、上記の関係が得られるかを推算したところ、計算値と実験値がよく一致することが分かった。この結果から、細孔径/分子径が2以上になると反応速度がオレフィンの種類によらないことが分かった。今回使用した多孔質ガラスのようなメソポアを持つ物質を触媒担体とすると、分子径との微妙な差によって、形状選択性が出現することが明らかになった。さらに、分子径と細孔径の比を測定することによって、水素化反応速度を推定することができた。ホウケイ酸ガラスを出発原料とする多孔質ガラスは、新たな形状選択性を持つ触媒担体として使用できることが分かった。
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