少量のアルミナを添加したホウケイ酸ガラスを原料として多孔性ガラスを調製し、これにニッケル及び白金を担持して触媒とした。この触媒を使用して、メチル基の数と置換位置の異なるベンゼン、ヘキセン類及び炭素数が6から10までの1-オレフィン類の水素化反応を行った。アルミナ含量の小さな多孔性ガラスでは、反応速度定数は分子径に依存せず触媒の比表面積とともに増加する傾向を示したが、アルミナ含量が4%を越えると、同一分子量であっても径の大きな分子の反応速度定数が減少した。また、ニッケル触媒と白金触媒では、前者の方が活性劣化速度が大きくなる傾向を示した。これは、ニッケルに比較して白金の方が水素化活性が大きなために、コ-クへの反応が進行する前にパラフィンに変化するためにであると推定された。 表面積及び細孔分布に及ぼすアルミナ含量の影響を検討したところ、表面積はアルミナの添加量とともに増加するが、4%を越えると急速に減少することが分かった。これは、アルミナの添加によって酸化物中の酸素の拡散が抑制され、結果として分相が悪くなり、小さな細孔が多く生成したためと考えられる。細孔分布がアルミナ添加によって単調に減少して行くことからもこの考えは指示された。さらに、アルミナ含量が3%の時、単一なメソポーラス細孔が生成することが明らかになった。 ニッケル触媒では、ニッケルの担持率によって細孔分布が変化し、1%以下ではほぼ元のガラスと同じ程度の細孔が得られたが、8.5%では、メソポーラスな細孔がミクロ細孔へと変化して形状選択性を発揮したものと考えられる。以上のように、今回調製した多孔性ガラスは、メソポアとミクロポアの中間的な大きさの細孔を有し、調製条件あるいは金属の担持率によってそれを制御出来ることが分かった。今回調製した多孔性を使用することによって、ベンゼンよりも大きな分子径を持つ物質の反応に対して、形状選択的に合成を行わせることが可能であった。
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