研究概要 |
AOTと非イオン性界面活性剤,レシチンとの混合ミセル系では酵素-AOT間相互作用が抑制されるためミセル界面が安定化され,AOT系と比較してさらに酵素の活性・安定性が増加した.したがって,この混合型逆相ミセル系は,酵素活性を高く保持しながら基質や生成物のみを選択的に透過・分離できるために,分離を伴うマイクロバイオリアクターとして有効であることが確かめられた.水溶性基質・生成物に対する酵素反応の一例としてβ-galactosidase (β-gal)によるガラクトースの生産を行ったところ,低分子の基質・生成物は透過するが,高分子の酵素の移動抵抗は大きく増加し,酵素はバルク水相と分配した後もミセル内に安定に保持された.このとき,転化率は基質・生成物の二相間の移動速度に大きく影響されるが,この改善と連続操作は,遠心液々分配クロマトグラフィー(CPC)を用いることによって達成された.CPCのローター内には1068個の分配セルが固定され,各セル内には固定相として酵素を含む逆相ミセル溶液が遠心力により保持される.その中を移動相として基質を含む水溶液が通過する.移動相はセルの中をを微細な液滴状になりながら分散しつつ通過し,各セル間で分散・合一を繰り返すため,移動相とミセル内水相間の物質移動が十分に促進され,AOT/レシチン混合ミセルおよびCPCを用いて反応を行った場合は,バッチ型反応槽を用いた場合と比較して,転化率は大きく改善された.またローターの回転速度を増加すると移動相水相がより小さな液滴に分散し,二相間の接触が改善されるため転化率はさらに増加した.
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