研究概要 |
土壌細菌Agrobacterium rhizogenesのもつRiプラスミドにより誘導される植物毛状根を対象として,毛状根の根としての機能を保持しつつ葉機能を併有する“緑化毛状根"の作出を試みた。本年度は,先に誘導済みのパックブン毛状根の緑化に成功し,以下の知見を得た。 連続的な光照射下での培養において,パックブン毛状根は分枝した根の形態を維持したままで緑色化し,その細胞内にはクロロフィルの生成とチラコイド膜系の形成が認められた光照射のもとで培養された緑化毛状根は.活発な増殖ならびに高いsuperoxide dismutase(SOD)活性およびperoxidase(POD)活性を示した.緑化毛状根の良好な増殖と比較的高いSOD活性およびPOD活性を与える光照射条件として,白色蛍光灯による11.1W/m^2の光強度が選定された.光強度11.1W/m^2における緑化毛状根の培養では,培養時間21日で得られた毛状根増殖,全SOD活性および全POD活性は,それぞれ8.1g-dry root weight/dm^3,18×10^4U/dm^3および40×10^3U/dm^3であった.一方,暗条件下では,培養時間21日におけるこれらの値は,それぞれ3.8g-dry root weight/dm^3,3.0×10^4U/dm^3および9.5×10^3U/dm^3であった.緑化毛状根の光照射培養においては,側根の頻繁な分枝が生じ,その結果側根先端部にある生長点数の増加が認められた.
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