【目的】機能分子ポルフィリンのホストタンパク質としてモノクローナル抗体をとらえ、抗体が抗原と結合して初めて酵素機能を持つ、従来の抗体酵素とは異なったモノクローナル抗体利用法を開発する。具体的な目的として、(1)モノクローナル抗体の構造予測を行ない、抗体と抗原の結合状態、及び抗体酵素の活性発現機構についての仮説を設ける、(2)抗ポルフィリン抗体の解離定数測定、(3)遺伝子への変異導入によるアミノ酸置換により、抗体酵素の構造-機能相関の解析と改変を行う、の2点が挙げられる。 【2】研究成果 (i)抗体酵素の構造予測 塩基配列に基づくアミノ酸配列から、03-1抗体、並びに13-1抗体の両抗体について、抗原認識部位の立体構造をAbM抗体三次元構造予測プログラム(Oxford Molecular社)により推定した。予測の結果、抗体とポリフィリンの結合様式が明らかとなり、13-1抗体のH鎖CDR3に存在するTrp103が活性発現に阻害的に働いていることが示唆された。 (ii)L鎖抗体酵素の解離定数 L鎖のみでも抗原に結合し、活性をた結果に基づき、抗体L鎖の解離定数を蛍光消光法により測定した。13-1抗体L鎖(L-zyme)は、ポリフィリンと結合状態で高い活性を示したが、解離定数は、1.4X10^<-5>であった。この値は、モノクローナル抗体の場合の1.5X10^<-7>よりも高いが、特異的な結合であると言えた。 (iii)L-zymeの性質と変異導入 L-zymeは、反応最適温度が90℃の耐熱抗体酵素であった。耐熱製の原因を遺伝子に欠失変異を導入して調べた。その結果、115-146の疎水領域が熱安定性に、147-189領域が活性に重要であることが解った。
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