研究概要 |
(1)抗体構造予測 Oxford Molecuar社製の抗体構造予測プログラムAbMを用いて、抗ポルフィリンモノクローナル抗体(03-1,13-1)について3次元構造を予測した結果、13-1抗体においては、抗原結合領域において、H鎖CDR3由来のTrp103の突出が認められた。このことが、13-1抗体にポルフィリン鉄錯体が結合しなかったこと、蛍光消光法によって解離定数が決定できなかった原因と考えられた。 (2)抗体酵素の諸特性 13-1L鎖抗体酵素(L-zyme)の反応至適温度を決定した結果、90℃で最も高い活性を発現することが解った。定常領域を遺伝子工学的に除去した場合の、反応至適温度変化を調べた。その結果、親水性の高い領域(残基番号147-189)が活性に、疎水性領域(残基番号115-146)が熱安定性に関与していることが認められた。 (3)抗体酵素の酵素化学的定数 ピロガロールを基質として、酵素化学的定数を、決定した結果、Km (H_2O_2)=4.0mM,Km (pyro.)=2.3mM,kcat=667min^<-1>となった。そこで、新規抗体酵素、L-zymeと命名した。L-zymeのkcatは、既存の抗体最高であり、天然酵素にも匹敵する値であった。 (4)抗体酵素の触媒機構モデル 13-1抗体の超可変部領域の構造を予測からH鎖部分を除去して、L-zymeの構造予測図を作製した。L-zymeの触媒部位(予想)について、既にX線結晶構造解析により構造が明らかになっているArthromyces ramosus由来のペルオキシダーゼ(ARP)との構造比較を行った。13-1L鎖、ARP共に相似したアミノ酸の配置になっており、特に、ポルフォリン錯体が配位すると思われる両方のHis間の距離は、ARPで7.80Å、L-zymeで9.09Åと近い値であった。また、他の触媒残基についても、保存性が認められ、L-zymeは自然界のペルオキシダーゼ反応機構と類似の反応様式を備えている可能性が示唆された。
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