研究概要 |
本申請者らは、将来の培養原料として有望なC^1化合物のメタノールを炭素源、エネルギー源に用いてセリン経路を有するHyphomicrobium属細菌を培養し、その菌体を用いたL-セリンなどの水酸化アミノ酸の生産についての基礎的な研究を行ってきた。C_1微生物の特異な代謝経路であるセリン経路は従来本代謝酵素類の活性が高くて安定な微生物が見いだされていなかったために、詳細な酵素化学的研究はほとんど行われていなかった。本研究では、すでに本申請者らが見いだしているHyphomicrobium methylovorumを用いてL-セリンの生産法を検討すると共にセリン経路を構成する各種酵素について酵素化学的、分子遺伝学的研究を行うことを目的とした。 ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)はセリン経路においてグリセリン酸に炭酸を固定し、オキザロ酢酸へ変換する酵素である。H.methylovorumの無細胞抽出液より本酵素を収率40%で420倍に精製し、電気泳動的に均一な標品を得た。この酵素はサブユニットの分子量88kDaで同一のサブユニットからなる4量体であった。アセチルCoAがPEPCの活性を促進することはE.coli等で報告されているが、本酵素ではそのような現象は認められなかった。また、NADH,ADPはメチルアミンに生育させたPseudomonas MA由来のPEPCの活性を調節するがそのような効果も本酵素においては見られなかった。 H.methylovorum NCIB10099株の休止菌体を用いたメタノールとグリシンからのL-セリンの生産法の検討を行い、系内のメタノール濃度を14〜30mg/mlに保つこと、振とう回数を従来の300strokes/minから250strokes/minに変更することにより、100mg/mlのグリシンと104mg/mlのメタノールから53mg/mlのL-セリンを生産させることが可能となった。上記の反応条件を設定することにより、L-セリンの分解に関与すると考えられるセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼの逆反応を抑えることができたため、L-セリンの高生産が達成されたと考えられた。
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