本研究計画はFc受容体(FcγRII)のアレルギーにおける興味ある役割を明らかにするために遺伝子ノックアウト法を用いるところに特徴を有する。具体的には以下の手順で計画を遂行した。 マウスFcγRII遺伝子をネオマイシン耐性遺伝子の挿入により破壊し、ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ遺伝子を連結したターゲッティングベクターを構築した。これをES細胞に遺伝子導入し、G418、 FIAU選択により、相同組替え体を選択した。FcγRII遺伝子がノックアウトされたES細胞をマウスの胚盤胞期胚に注入し、偽妊娠マウス支給に戻してキメラマウスを得、このうちノックアウト遺伝子がgermlineに移行したマウスを選別した。さらに交配によりホモ接合体のマウスを作出した。このような変位マウスのBリンパ球、マクロファージなどにおいてはFcγRIIが実際に欠損していることををフローサイトメトリーにより確認した。この変異マウスの性質を次のような観点から検討した。 1)B細胞上のFcγRIIはB細胞に抑制シグナルを送ると予想されている。そこでFcを有する完全な抗IgM抗体でB細胞を刺激すると、野性マウスのB細胞は活性化れないが、変位マウスではF (ab') 2断片で刺激した場合と同等の活性化が見られたので、この仮説が正しいことが確認された。 2)変位マウスの肥満細胞はIgG免疫複合体で刺激した場合、野性型の肥満細胞に比べてはるかに、脱顆粒を起こしやすく、FcγRIIが肥満細胞においても、やはり抑制的に働いていることが示唆された。これらの結果より、この変異マウスがアレルギーのモデル動物として有用であることが示され、アレルギの原因や治療法の解明に大きな貢献が期待できると考えられる。
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