極鞭毛細菌のPsudomonas aeruginosa細胞がリン酸飢餓に晒されると、リン酸を認識してそれに集積することを発見した。NTG処理により取得されたAP構成変異株の中には、リン酸飢餓に晒さなくともリン酸に集積を示すものが見い出された。P.aeruginosaのリン酸認識の誘導がPhoBおよびPhoRタンパク質により制御されているかどうかを調べるため、phoBまたはphoR遺伝子の欠損変異株がカナマイシン耐性遺伝子挿入による遺伝子破壊により作製された。いずれの変異株もリン酸欠乏下でAP活性は誘導されなかったが、予想に反してリン酸への集積は誘導された。P.aeruginosaのリン酸認識の誘導は、PhoBおよびPhoRタンパク質による正の調節を受けていないようである。リン酸認識がリン酸欠乏によらずとも誘導される変異株APC1をPAO1株のゲノムライブラリーを用いて形質転換したところ、PAO1染色体DNAの29kbのHindIII断片により変異が相補されることがわかった。サブクローニングと相補試験を繰り返した後、塩基配列を決定したところ大腸菌のphoU遺伝子と類似の遺伝子が相補に必要であることが分かった。さらにP.aeruginosaのphoU遺伝子の上流に大腸菌のpstAおよびpstB遺伝子に類似した遺伝子を見つけた。これら遺伝子は大腸菌と同様にオペロンを構成していたが、その遺伝子構成は大腸菌のそれとは異なっていた。phoU遺伝子を温存してpstAおよびpstB遺伝子を破壊した場合にもリン酸認識の負の調節はやはり解除される事から、リン酸特異的輸送系であるPst複合体がリン酸認識の負の調節に係わっていることが確認された。
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