研究概要 |
研究計画にもとづき,Push/Pull HDFにおける輸送現象を把握するため、水溶液系の基礎実験を前年に引き続いて行った。1)Push/Pull透析濾過(HDF)実験 マーカー物質を含む被験液側を、供給タンクを含む閉鎖循環回路系とし、種々のPush/Pull流量の組み合わせを変えた透析濾過実験を行い時間平均のクリアランスC_Lを求めた。対照として透析(HD)のみを行ったときの閉鎖回路系実験を行った。例として、Q_<Pull>=100ml/min、Q_<Push>=300ml/minにおけるPush/Pull HDF時C_L【ml/min】は、尿素で171、ビタミンB_<12>で130、ミオグロビンで57、HD時のC_L【ml/min】はそれぞれ178,126、44となり大分子溶質ではPush/Pull HDFが、小分子溶質ではHDが優位であることが明らかとなった。2)非定常透析濾過実験 Push→Pull、Pull→Pushに切り替えによる非定常状態を把握するため、切り替え後10秒ごとの溶質透過量を調べた。その結果、Push相、Pull相とも、直前のPull相、Push相の影響を受け、例えばミオグロビンでは、Push相は直前のPull相最後の血液側濃縮状態を改善するような希釈過程が、Pull相は直前のPush相最後の希薄された状態からの濃縮過程が非定常的に働くことが明らかとなった。以上得られた実験結果に対し、透析濾過器内物質ならびに運動量輸送の時間変動を説明するモデル(偏微分方程式)を構築し、2)の非定常実験のデータとの照合を行った。その結果、モデルによる推算値と実験結果はほぼ満足する対応を示した。さらに実際に臨床応用した時の最適操作条件を模索したところ、Q_<Pull>,Q_<Push>ならびにリザ-バ容量V_Dいずれも大きいほど高分子溶質の除去に優れることが明らかとなった。その機序は、それぞれ正濾過(Pull)による除去量の増大、溶質除去にとって不利な逆濾過(Push)時間の相対的短縮、溶質除去にとって不利な非定常の影響を軽減することによる。
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