研究概要 |
選択性を生成する錯体の蛍光特異性と速度の差の両面から向上することを目指し、蛍光性錯体生成反応を用いる酸化数の異なる金属元素の感度の高い選択あるいは同時定量法を設計するための実験研究を行うとともに、蛍光検出フローインジェクション法による分別定量のためのシステムを構成し、機器のオンライン化、分別定量条件最適化及びデータ処理の自動化に必要なソフトシステムを開発することにより、酸化数の異なる金属元素全般に対応できるような分別定量システムを構築することを目的とした研究を実施し、以下の成果を得た。 1.複数の酸化状態を取り得る金属元素としてスズを選び、スズ(II)及びスズ(IV)とモリン(3,5,7,2′,4′-ペンタヒドロキシフラボン)との蛍光性錯体生成反応の平衡と速度とを硫酸、塩酸、過塩素酸及びリン酸中で検討し、両スズとも硫酸及び過塩素酸中で蛍光性1:1錯体を生成するとの結果を得た。過塩素酸酸性でのスズ(IV)錯体の蛍光がわずかに強い点を除けば、錯体の蛍光特性に大きな差は見られなかったが、錯形成速度は大きく異なり、スズ(II)の反応はストップトフロー法で、スズ(IV)の反応は二液混合法で速度解析した。これらの結果を基に、直線補外法によるスズ(IV)共存下でのスズ(II)の選択定量のための条件を検討した。 2.計上設備備品であるフローインジェクション分析装置を現有の蛍光分光光度計に接続し、10倍モルまでのアンチモン(V)共存下での0.02〜1μMのアンチモン(III)のフローインジェクション分析法を開発した。 3.反応曲線シミュレーション及び分別定量条件最適化ソフトシステムを開発し、スズとモリンとの錯形成の速度解析及び直線補外法によるスズ(IV)共存下でのスズ(II)の選択定量の条件設定に応用した。
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