研究概要 |
生成する錯体の蛍光特異性と速度の差の両面から分析の選択性の向上を図ることを目的とし、蛍光性錯体生成反応を用いる酸化数の異なる金属元素の感度の高い選択あるいは同時定量法を開発するための研究、蛍光検出フローインジェクション分析へその結果を応用するための研究を実施し、以下の成果を得た。 1.複数の酸化状態を取り得る金属元素としてスズを選び、スズ(II)及びスズ(IV)とモリン(3,5,7,2',4'-ペンタヒドロキシフラボン)との蛍光性錯体生成反応の平衡と速度とを検討し、硫酸1.5M、モリン8×10^<-4>Mで反応開始後20秒と1分の蛍光強度の差を検量線に用いることにより、検出限界2×10^<-7>Mで1×10^<-5>Mまでのスズ(IV)の選択定量が可能であることを発表した。なお、この研究での速度定数の評価および分別定量条件のの最適化には新たに開発したソフトシステムを使用した。 2.バッチ法で得た結果を基に、アンチモンとスズの蛍光検出フローインジェクション分析法を設計した。これらの研究に直接関連する研究を並行して実施し、以下の成果を得た。 3.アンチモン(III)-3-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン錯体の酸化反応を利用するクロム(III)共存下での微量クロム(VI)の蛍光定量法を開発し、発表した。 4.ジルコニウム(IV)およびハフニウム(IV)とセミキシレノールオレンジとの錯形成速度を研究して、速度差分析法を開発するのに不可欠な知見である両金属イオンに対する結合配位子の効果を考察し、発表した。 5.CDTAによる水銀(II)-PAR錯体の配位子置換反応速度に及ぼす無機陰イオンの触媒効果を研究し、大過剰の硫酸塩共存下での亜硫酸塩あるいはチオ硫酸塩の接触分析法を開発した。
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