研究概要 |
本研究は,合金電極/溶液界面における吸着現象の計測システムを開発し,とくに歯科用合金電極における微量の薬物の吸着挙動を解析する目的で行われた。主な研究実績は次のとおりである。 1.合金電極/溶液界面における微量吸着物質の計測システムの作製 ボルタンメトリー,光反射法,およびIn situ電気化学水晶発振子マイクロバランス法を主な構成要素として,合金電極/溶液界面の変化を観測できるシステムを作製した。 2.貴金属合金/溶液界面における薬物の吸着,及び薬物による合金表面反応の検討 1で作製した計測システムを用いて,貴金属合金/溶液界面の観測を行なった。複方ヨードグリセリン存在時の各貴金属合金のボルタモグラムおよび反射率-電位曲線を測定し,生成する表面層について検討した。銀を含む合金ではヨウ化銀,また銅を含む合金ではヨウ化銅が,たかだか単分子層あるいは2分子層程度の極めて薄い表面層として合金表面に生じることを,本計測システムで明瞭に捉えることができた。 3.卑金属合金と複方ヨード・グリセリンの相互作用 複方ヨードグリセリンによる表面層の生成の有無を光反射法で観測したところ,表面層は生じていなかった。卑金属合金であるNi-Cr合金では,ヨウ素に酸化されて合金金属の溶出が生じることがわかった。 本研究は,分光電気化学的方法などを用いた計測システムで,歯科用合金表面で生じる薬物などの吸着現象を解明する最初の試みであった。これより,合金表面への薬物の脱吸着の有無,吸着から表面腐食への移行などの知見が得られて,薬による合金の表面反応を理解できることが分かった。
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