1.本研究は、油/水界面微小空間における電荷移動ダイナミクスと界面の化学的微細構造との関係を把握することを目的とし、新規に開発した交流誘起モード走査型電気化学顕微鏡法(SECM)によるイオノホア等で修飾された油水界面でのイオン移動速度分布および界面の三次元的微細構造について検討を行った。 2.油水界面にはニトロベンゼン/水界面を用い、i)テトラメチルアンモニウムイオン(TMA^+)移動系、並びにii)DB-18-crown-6あるいはiii)トリトンXの界面修飾系によるNa^+イオン移動系を検討対象とした。 3.(1)液性状"局部-その場"観察用として開発した交流誘起SECMは、信号安定性及び探針作成の要素技術に多少問題はあるものの、界面局所空間の化学情報の三次元的可視化を可能にし、〜10nmの空間分解能及び10^<-10>mol・dm^<-3>のイオン移動検出感度を持つ。 (2)未修飾ニトロベンゼン/水界面におけるTMA^+イオンの移動に対する移動サイトの局在化は見られない。 (3)DB-18-crown-6で界面修飾したNa^+イオン移動系では、修飾剤は界面に局在化分布し、それに対応した領域でNa^+イオンの促進移動域が観察された。また、修飾剤は、界面に垂直な方向にも局在化分布を示し、DB-18-crown-6/Na^+種吸着領域の界面局所性状がその移動過程および速度に重要な役割を果たすことが示唆された。イオン移動の速い領域と遅い領域での速度比は、〜3.3であった。 (4)トリトンX界面修飾Na^+イオン移動系は、(3)の系と同様、イオンの促進移動領域は局在化分布を示す。しかし、イオン移動の反応機作は(3)の系とは異なり、トリトンXとNa^+の錯形成とそれの拡散の重要性が示唆され、平均的移動速度比r_<(3)>/r_<(4)>は 1/1.2であった。
|