光還元性を有するジオクチルビオロゲンおよびアニオン伝導性を付与するブロモトリブチルスタナンを含むポリエチルメタクリレート膜と、光酸化性を有するジブチルフェロセンとブロモトリブチルスタナンおよび臭化テトラブチルアンモニウムを含むポリエチルメタクリレート膜を透明導電ガラス板間で圧着し、光レドックス性イオン伝導二層膜を作成した。この二層膜に紫外線を照射すると、0.45Vの電位を発生し、暗下に放置してもこの電位はすぐには消失せず、1日後でも約半分の電位を保持した。電極間を短絡させると、約40μAの電流を発生し、電流値はすぐに減少するもののしばらく流れ続けた。また、放電後、光照射によって再び電位が発生し、充電、貯蔵、放電を繰り返すことが可能であり、光二次電池素子としての機能を有することがわかった。 イオン伝導向上のため有機ケイ素化合物を用いた場合、光二次電池機能は現れず、有機スズ化合物とビオロゲンおよびフェロセンとの相互作用が重要であることがわかった。有機スズ化合物の構造を変えたり、ハロトリブチルスズおよびビオロゲン対アニオンを塩化物イオンまたはヨウ化物イオンに変えても、電位発生速度の改善はあっても光エネルギーの貯蔵性能は低下してしまい、ブロモトリブチルスズが最適であることがわかった。 放電電流の経時変化測定により、両層の界面付近の部分自己放電層が電子移動の抵抗層となって、全体の自己放電を防ぐため、薄膜であっても電荷分離状態を保持し光エネルギーを貯蔵できることが示唆された。 以上より、有機スズ化合物で構築されたアニオン伝導膜を用い、光レドックス活性化合物を含む二層膜とすることにより、フィルム型二次電池の作成が可能であることが明らかとなり、今後、レドックス物質の高活性化と高濃度化、レドックス物質との相互作用を持つより効果的イオン伝導体の探索によって、より高性能の光二次電池素子の開発を期待できることが示された。なお、本結果については現在投稿準備中である。
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