軽量で柔軟性を有し大面積化の可能な有機フィルム型の光二次電池は、最も優れた電池として実現が期待される。本研究は、新しい設計概念に基づき、光二次電池機能を有する素子を開発することを目的としている。 トリブチルスズハライドとテトラブチルアンモニウムハライドを含むアニオン伝導性ポリエチルメタクリレート膜に、光還元性を有するジオクチルビオロゲンおよび光酸化性を有するジブチルフェロセンを溶かした二種類の膜を作製し、透明導電ガラス板間で圧着して二層膜を作成した。この二層膜に紫外線を照射すると0.48Vの電位を発生し、暗下に放置してもこの電位はすぐには消失せず、電極間を短絡させると約40μAの電流を発生し、1日後でも約半分の電位および電流が観測された。また、充電、貯蔵、放電を数回繰り返すことができた。 有機スズ化合物はビオロゲンおよびフェロセンの光酸化還元反応を促進するのみならず、膜に電子伝導性を付与し、光充電の際二層膜間でアニオンの移動のみならず電子移動も促進することが明らかとなった。また、系内のハライドイオンの種類によって充放電特性に大きな差が認められ、臭化物イオンが適することがわかった。第四級アンモニウム塩ポリマーを用いるとビオロゲンの溶解度が増大し、さらにIVの補助電圧をかけると光照射によって発生する電流が大幅に増大することもわかった。 以上より、光レドックス活性化合物を含む二層膜によりフィルム型光二次電池素子の開発を行うことができた。
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