研究概要 |
研究代表者らは、従来よりリン酸ジルコニウム骨格を持つ多価陽イオン導電性固体電解質を系統的に研究してきた。それらの内で、MgZr_4(PO_4)_6;〔MgZP〕は比較的高いMg^<2+>イオン導電率を示すので、これを電解質とし、炭酸アルカリを活物質に用いた、起電力(EMF)型CO_2センサー(Pt|CO_2,O_2|M_2CO_3||MgZp|O_2,Pt)の応答性を検討し、Solid State Ionics誌に報告した。500℃の時最も応答速度が速く、数分以内にEMFが一定値になったが、測定温度が450、400、350℃と低くなるにつれて応答が遅くなり、EMFが一定になるのに要する時間が長くなった。この原因として、測定温度が低くなるにつれてセンサーに使用しているMgZP自身の抵抗値が大きくなることと、測定極で炭酸塩と炭酸ガスとが平衡に達するに要する時間が長くなることが考えられた。この点を改善するために、以前に報告したMgZPのPの一部をSiで置換した固体電解質、Mg_<1.15>Zr_4P_<5.7>Si_<0.3>O_<24>;[MgZrPSiO]を用いてCO_2センサーを作製し、特性を検討した結果、300℃では若干のばらつきは見られたが、全測定温度範囲でEMFは、ネルンスト応答を示した。これは、MgZrPSiOのMg^<2+>導電率がMgZPに比べ、約2桁大きいことによると考えられる。直線応答域の傾きから反応電子数を求めると、全温度域でn=2.2〜2.4となり、作動可能温度を300℃まで下げることが可能で、これを第19回化学センサー研究発表会及び第20回固体イオニクス研究発表会で報告した。また、MgZPのZrの一部をTiで置換した系について新たに取り上げ、導電率等物性の検討をした。その結果、Tiの添加により導電率は上昇し、MgTi_<0.5>Zr_<3.5>(PO_4)_6の組成で最高となったが、Tiがさらに増すと減少し、MgTi_4(PO_4)_6ではMgZPより低くなった。有機錯体・高分子系の低温型多価陽イオン導電性固体電解質の探査は、出発物質の合成段階である。
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