研究概要 |
イオン導電性の無機系固体電解質については数多くの研究があり、また近年、可とう性や、薄膜化が可能で軽量、薄型のデバイスが作製可能な高分子系固体電解質が多く検討されているが、多価陽イオン導電性固体電解質に関しては研究はまだ少ない。そこで、本年度は固体高分子電解質を主に検討した。乾燥室素で置換したドライボックス中でエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジアクリレートとZnX_2(X=Br,I)に重合開始剤のDarocur-1173を種々の割合で混合し、この溶液を多孔性ポリプロピレン膜に含浸させ、2枚のガラス平板に挟み、366nmの紫外線を5分間照射して架橋重合固化させ、固体電解質とした。試料の導電率は、ステンレス鋼製の電極間に試料を挟み、-5〜80℃の間で交流ブリッジにより、1または20kHzで抵抗値を測定し、計算した。ZnBr_5 5mol%では20℃で4×10^<-5>Scm^<-1>を、ZnI_2 5mol%では20℃で4×10^<-5>Scm^<-1>を示した。これらの値は、比較検討試料として調製した、リチウム塩の約6割の大きさであり、高分子系固体電解質として有望である。前年度まで検討したマグネシウムはハロゲン化物の溶解度不足のため前駆体溶液が調製できず測定できなかった。さらに、Zn(CF_3SO_3)_2を金属塩とする系も検討した結果、塩無添加の試料の導電率が25℃で8×10^<-6>Scm^<-1>であったのが、0.5mol%の添加で約1桁上昇し、6mol%付近で最大となり、4×10^<-4>Scm^<-1>を示した。
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