光合成反応の基本は、nm(10nm)レベルの極めて薄い生体膜で進行する高効率の光誘起電荷分離過程である。人工系でも光機能分子を適切に配列したnmレベルの超薄膜を開発することにより、人工光合成型光エネルギー変換システムを実現することができると考えられる。 本研究では、電子供与体分子(D)あるいは電子受容体分子(A)を複合化した厚さ数十nmの高分子超薄膜を水面展開法によって作製し、膜の光機能特性について検討した。その成果を以下にまとめる。 1。Dとしてポルフィリンとルテニウム錯体、Aとしてビオローゲンとキノン、高分子支持体としてポリ塩化ビニル(PVC)とポリメチルメタクリレート(PMMA)を組み合わせた超薄膜の作成に成功した。 2。膜の光機能を蛍光法ならびに第二高調波発生(SHG)法により検討した。電子式冷却器、バリアブルゲートユニット、低温バスサ-キュレーターを備品として購入して測定の高感度化・高性能化を図り、超薄膜における蛍光、SHG信号の測定を可能とした。 3。ポルフィリン錯体についてLB膜のSHG特性を調べ、高分子超薄膜における配向性の相違点について調べた。さらにポルフィリン担持PVC膜とキノンとの相互作用を溶液中で調べ、ポルフィリンの膜表面への選択的分布を明らかにした。 4。ルテニウム錯体担持膜とビオローゲン担持膜の重ね合わせの方向を変えて蛍光を測定し、膜界面での電子移動がおこる事を明らかにした。また両色素担持膜との比較を行い、膜表面での高効率な電子移動を確認した。 5。ルテニウム錯体担持膜の積層化とSHG特性の関係を明確にし、膜形成時に錯体が膜表面へ選択的に分布することを確認した。
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